トンネルを抜けると…という有名なフレーズが頭をよぎった。ただそこにあったのは雪国ではなくて、昭和の面影を残す愁いを帯びた路地裏の光景。日々何か新しいものが増えていく、そんな感じさえする福岡市天神、そのど真ん中。オシャレな商業ビルの裏手には、そこだけ時間が止まったような錯覚を起こさせる、昭和臭プンプンの中華飯店がありました。
まるで都会のエアポケット、そんな言葉がピッタリ当てはまるノスタルジックな空間。
「天神の真ん中にこんな場所があったんですね。」という筆者の問いに「昔からあるよ」と当たり前のように答えた店主の笑顔。
そりゃそうでしょうよ…
「新生飯店」昭和レトロな都会の特等席
福岡天神の観光スポット。左手に福岡市役所、正面に大丸エルガーラが見える。
やって来たのは福岡市役所の前、周りにはファッションビルやデパートが立ち並ぶ繁華街。福岡天神の観光スポットとして、市役所前広場や大丸エルガーラ広場では様々なイベントが開催される賑やかな街。
後ろを振り返ると天神VIVREとMMTビルという商業ビルが建つ。
ここには天神VIVREというファッションビルとMMTという商業ビルが建ち、その間を走る通り沿いには様々な商店が立ち並んでいる賑やかな場所。
MMTビルの途中でポカリとあいた通路。
若者やサラリーマンが行きかう通りを歩いて行くと、右手のMMTビルにトンネルのような通路を発見。覗いてみると奥が開けていて、何か別のビルが建っているようです。なんだここ、気になっちゃうじゃないですか。
待ち受けていたのはレトロな路地裏
激安ラーメンで有名な膳の脇を抜けて続くトンネル、その先に待ち受けている物は…
気になったなら行かねばならぬ。なんたって西鉄天神大牟田線、その大牟田が気になったからと特急に飛び乗ってしまうオッサンですから。こんなトンネル恐れるに足らず、真っ直ぐに進んでいきます。
貫くんだ!自分を!まっすぐにぃっ!
とは言えこの通路はまっすぐしかないんだけども、黒い眼鏡をかけた「いいとも!」という合言葉の超有名人が言っていた「町歩きは大人の冒険」という言葉。
今まさにそんなシチュエーション。
新生飯店の外観。
薄暗い通路を抜けたその先、目の前に現れたのは昭和の時代にタイムスリップしたかのような大衆中華飯店。きつねに化かされたのか、まるで宮崎アニメのような急展開。
古き良き時代の垢をこれでもかっ!というくらいに纏った看板、これぞレトロ、昭和の風景を切り抜いたような北京料理の新生飯店。周りの街並みとのギャップが凄まじい、ノスタルジックが止まらなくなるような光景でございます。
圧倒的な昭和の世界観、喜び勇んで店に入ろうとしたその時、小心者特有の悪いクセ、臆病な心がムクムクと湧き上がる。カメラを向けた瞬間に「なんしよっとかぁ!きっさ~ん」なんて怒り出す頑固おやじが出て来たらどうしよう…怖い、けど入りたい、逡巡すること数秒間。押し寄せる欲望に抗えず、勇気を振り絞ってって扉を開ける。逃げちゃだめだ…
そう、いいともの黒メガネが言っていた、町歩きは大人の…以下略
冒険に必要なのは、勇気と好奇心なのです。
新生飯店の店内。
意を決してややうつむき加減で扉を開け、店内へ一歩踏み込み顔をあげた瞬間、目の前に広がっていたのは紛れもない昭和の世界。カウンター、椅子、壁、頭上を横切る大きなダクト、昼食をとる客のいで立ち、全てが昭和、完璧すぎるまでのリアル昭和が目の前に存在していました。
新生飯店のメニュー(北京料理)
壁に掛けられた札に書かれた新生飯店のメニュー。
見たまんま、どっから見ても歴史ある大衆中華飯店。看板には北京料理と書かれていたけども、どんなメニューがあるのだろう。店内を見渡すとメニューは壁に。
やっぱ「ちゃんぽん」あるじゃん!(福岡のソウルフードは「ちゃんぽん」じゃないか説)の有力サンプルですね。
こちらが新生飯店のメニュー
- ちゃんぽん
- 皿うどん
- 焼そば
- やきめし
- 中華丼
- ダル麺
- 味そうどん
- 焼ビーフン
- ライス
- ビール
- 日本酒
- 焼酎
あと写真を撮るのを忘れたメニューポップがあって、そこには半チャーハンとマーボー丼セット。
なるほど見れば見るほど大衆中華、ほとんどが麺料理。ちゃんぽん、皿うどんはまあ…ダル麺は中華丼のあんかけをかけたような麺でしょう。他の料理も名前をみればだいたい想像がつく。が、そんな中で一つだけ異彩を放つメニュー。
「味そうどん」
気になる…貫け!自分をっ!真っ直ぐに!信じるままに!だぁぁ~ッ
じゃなかった「味そうどん」下さい…ボソッ
「味そうどん」の正体
カウンターに並ぶ調味料。
注文してから料理を待つ間に調味料をチェック。醤油、酢、ソース、コショウというオーソドックス且つ王道の配置。容器がとてもレトロ、昭和の世界から抜け出してきたような入れ物たち。なんといっても爪楊枝が秀逸、そうそう、こういう入れ物でしたよね、昭和は。細部にまで拘った見事な演出。
新生飯店の味そうどん
カウンターに座ってから数分で味そうどんが到着。いったいどんな料理かと思ったけども、見た目は肉味噌をぶっかけた麺。ジャージャー麺に近いかもしれない。
肉味噌の部分を掬って一口。これはやっぱりジャージャー麺だと思う、味付けは甘めの味噌を使っていてピリ辛感はほとんどない。けっこう濃厚でズシッとくる甘みそ風味。
なかから出てきた面は太麺の中華麺。ちゃんぽん麺じゃなかろうか。
肉味噌をタップリつけて食べます。
麺の太さは細目のうどんと言えなくもないけども、どう見てもかん水を使った中華麺。ズズッと麺を口いっぱいに頬張ってみると、茹で加減はかなり柔らかめ。極太気味の柔らかい麺と、少し甘い濃厚な肉味噌とがよく合う。
うん、普通に美味しい。これイケるね。
トロミのある肉味噌が良く絡んでズルズル食べられる。
やっぱこういう料理は上品にチビチビ食べるよりも、ガッサガッサとかき混ぜて豪快に食べたい。なので思い切り混ぜくってからゾゾゾゾッと豪快に食べてやりました。
麺が柔らかいので噛む力もいらず、太麺なのでのど越しも良く、少し甘くて濃い味付けの肉味噌もタップリ余るほど入っているので食べごたえ満点。シャキシャキもやしが全体をサッパリさせて、キュウリが爽やかに味を切ってくれるので途中で飽きない。
うわぁ~と声が出るような鮮やかさやオシャレさはなく、ぬぉぉっ!というような個性的なこだわりの味でもないのだけど、どこかホッとするマッタリして滑らかで優しい味わい。店の雰囲気も相まって、素朴で懐かしさを感じる味わいの料理でした。
笑顔がステキで優しい大将
訪れた時間は13時半ごろだったでしょうか、お店は昼のピークタイムを抜けてちょうどひと息つこうかというタイミング。店に入るとまだ忙しさの余韻が残っていて、恐る恐る写真撮って大丈夫ですか…と許可を求めたところ、笑顔で「どうぞ」と言ってくれたお店の大将。見た目は頑固そうだったけど、笑顔がステキな優しい人でした。ホッと一安心。
ご夫婦で営んでいるのか、調理中にも普通に会話をしていてとても仲が良さそう。レトロでアットホームで、人の温かさがココにはありました。
新生飯店の界隈は天神ビックバンという再開発予定地になっていて、バブルの頃でいうところの「地上げ」の最中みたいな場所なんです。まあ、あのころとは随分違うでしょうが…
こういう路地裏というか、ビル裏にひっそりと残された昭和の面影、レトロな空間。いつまで見ることが出来るか分かりませんが、少しでも長く残って欲しいものです。
「新生飯店」
住所:福岡市中央区天神1丁目10-14
営業時間:11:30から18:00(食べログ)
定休日:日曜日
※この記事は私が訪れた時のものです、現状と異なる場合があります。最新情報、詳細はご自身で確認することをおすすめします。
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