貴賓館2階
2階の階段を昇り切ると、広い踊り場のような空間になっていました。左手に見えている扉は物置の扉。このまま正面に見えている扉へと歩いて行くと
玄関の上に張り出したバルコニーがありました。
ちょうどこの部分ですね。
2階の階段ホールから右方向、食堂の上にあたる部分へ向かいます。
一番奥の部屋がこの建物で一番格調高い部屋、貴賓室です。
天井は装飾を施された漆喰、さらに空の絵が描かれています。
明治の洋館には必ずと言っていいほど備わっている暖炉、その縁の装飾、マントルピースというのですけれども、この部屋だけ特別に細かい装飾が施されています。さらに言うと、この建物は建築時からガスが引かれていたために、ガスヒーターになっています。
貴賓室の一番奥、塔の2階部分。
上を見ると丸い採光窓が沢山ならんでいました。
続いて貴賓室の寝室。室内の扉と廊下と両方から繋がっています。
天井は漆喰を使った豪華なもので、木のダークブラウンとの白い漆喰の調和がとても綺麗。ただし装飾は控えめ、寝室だけに豪華だけども落ち着いたデザインになっています。
さらに続き部屋として化粧室がありました。この部屋にはタンスや姿鏡などが備え付けられていたそうです。
廊下を挟んで貴賓室の向かい側にある少し広めの部屋は談話室と書かれていました。この部屋は皇族である閑院宮載仁親王殿下が寝室として使ったお部屋だそうです。貴賓室の寝室では手狭であったため、この部屋を利用したのだとか。
閑院宮載仁親王殿下は明治から昭和初期に活躍した皇族で、日露戦争に従軍し機関銃の運用に長け、本渓湖の戦いで奇襲攻撃によりロシア軍を敗走させるなど活躍。陸軍元帥となり参謀総長を務めた人。
談話室の横に設けられた2階の洗面室。本来は風呂として使わない部屋なのですが、バスタブが置かれているのは閑院宮殿下が宿泊した際に風呂として使ったため。
床に使われているのは明治時代に造られた国産タイル。この時代の国産タイルは技術力不足から薄く作る事ができず、壁にはイギリス製の薄いタイルが使われています。
2階の階段ホールを抜けて、ここは貴賓室の反対側にある西側寝室。全体的にシックで落ち着いた室内。
マントルピースもシンプルです。
天井は漆喰で作られた豪華な物、真ん中を一段高くした織り上げ天井になっています。装飾は少な目、シンプルなデザイン。そしてこの部屋にも隣に化粧室があります。
よーく見ると、部屋の隅に開口部があります。貴賓館は建築時からガスヒーターが導入されているため、暖炉のような煙突がありません。暖房が備えられている部屋には、必ず天井の隅に換気用の排気口が設けられています。
そして最後の部屋、2階の食堂です。
天井は金属を圧したような板が貼られていました。この天井は1階の遊戯室と似ていますね。
2階東側廊下の端にある窓から外を眺めてみました。この窓に使われているガラスは明治時代に造られたもの、写真じゃ分かりにくいですがゆがみと気泡が入っています。ちなみに先に見えている建物は中洲の建物、博多の歓楽街です。
2階の平面図、物置と配膳室は入る事が出来ませんでした。1階と2階、各部屋を一通り見学したのですが、とにかく細かい所まで神経を使って作られている建物だという事がよくわかります。さすが来賓を迎えるための建物、見どころ満載でした。
旧福岡県公会堂 貴賓館見学を終えて
グルッと建物の内外を見学させてもらったんですけども、この建物が建てられたのは1910年(明治43年)のこと。第13回九州沖縄八県連合共進会の来賓接待所として完成しました。九州沖縄八県連合共進会というのは産業や技術交流のために開催された博覧会、九州の各県が持ち回りで会場を提供して開催されたそうです。
現在も物産展みたいなことをやっていますが、あれを国が奨励して各地域で大規模にやる万博に近い催しだったようです。
館内には当時の地図が展示されていました。3万8千坪の敷地に本館・二号館・特許館・畜産館・温室・冷蔵室・演芸館・音楽室などの建物が立ち並び、イルミネーションや噴水などで飾られた大博覧会。期間中の入場者数は91万4407人、市内は連日大変な賑わいだったといいます。
この貴賓館はそんな会場の外れに建てられた建物の一つで、最初から博覧会終了後も残す予定で建てられました。博覧会終了後は市の公会堂として長く使われた後、戦後は福岡高等裁判所、福岡県農林事務所、福岡県教育委員会庁舎として利用された後、建築当時の姿に復元、現在は一般公開されています。
完成当時の姿を復元した模型。
天神中央公園が整備される際に、計画では福岡県庁旧庁舎と共にこの貴賓館も解体される予定でした。しかし市民の保存要望を受けて昭和58年に現在の貴賓館部分だけが残されることが決定、後ろにあった講堂は解体されてしまいました。昭和59年には貴重な明治時代の木造建築として、国の重要文化財指定を受けて現在に至ります。
旧県庁の庁舎も、すぐ近くに建っていた旧福岡市役所の庁舎も、写真を見るととても素敵な建物なんですよ。
こんな建物がこの一角に集中して街並みごと明治から大正・昭和の街並みとして残され、そして活用されていたら、福岡市内随一の観光スポットになったんではないかと…というか、そんな姿を見てみたかった。
まあ壊してしまったものはしょうがない、二度とは戻りませんからね。今残っている貴重な古い建物たち、とくに昭和の建物を残してもらいたいと思う今日この頃。あと何十年か経てば築100年の建物になるんですから、今から守って未来の人々に寂しい思いをさせないようにしてほしいと切に願います。
福岡市に残る貴重な明治の建築物、近くにはもう1棟美しいブリティッシュ様式の洋館があります。
近くに来たなら、ついでに見学してみると面白い発見があるかもしれませんよ。
「旧福岡県公会堂 貴賓館」
住所:福岡市中央区西中洲6-29
開館時間:9:00から18:00
休館日:月曜日(月曜日が休日のときは翌日)及び12月29日から1月3日まで
※この記事は私が訪れた時のものです、現状と異なる場合があります。最新情報、詳細はご自身で確認することをおすすめします。
貴賓館公式サイト⇒http://www.fukuokaken-kihinkan.jp/
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