博多の街は平家との結びつきが強く、平清盛の手によって本格的な港湾都市になったと言われています。やがて平家が滅び、次に台頭したのが源氏の鎌倉幕府。幕府は博多に鎮西探題を置き、九州統治の拠点としました。
「円覚寺」関東に勢力を誇った北条家の「三つ目鱗紋」が博多に!鎌倉幕府が残した足跡
おぉっ!三つ目鱗の紋。九州で残っているのは珍しいと思ったので思わず撮っちゃいました。博多といえば、どうしても室町時代後期、大内の支配から大友と毛利の勢力争い、龍造寺による筑前支配と島津の台頭、そして豊臣秀吉による九州征伐。この辺りのイメージが非常に強い町なんです。僕の勝手な思い込みですが。
しかし実際に来てみると、源平の頃の博多もとても魅力的なんです。幕府というか、それ以前、朝廷支配の頃は福岡の大宰府が政治中枢としてありました。平家が力を持った時代には平清盛による港湾整備によって博多は貿易拠点として栄え、平家の隆盛を経済面で支えました。平家没落後は源氏の鎌倉幕府の統治機関である鎮西探題が博多に置かれ九州支配の拠点となり、元寇による外敵の侵攻からは国土防衛の最前線となった城塞都市。鎌倉幕府の崩壊に前後した朝廷方の大宰府、幕府の鎮西探題の対立。それにともなう少弐、大友、菊池といった守護の争い(博多合戦)の舞台、南北朝から室町幕府までの動乱。よくよく考えたら、歴史の転換点に重要な役割を果たした凄い町なんです。
今回見つけたのは、そんな歴史ある博多の街で、鎌倉幕府時代の痕跡を残すお寺、円覚寺です。
このお寺は聖福寺塔頭寺院(大きな禅寺の敷地内にある小寺院)の一つ、鎌倉時代中頃の1246年から1248年に建立されたとされるお寺。元々は祇園付近にあったそうですが、1586年に喪失。
1586年といえば、岩屋城が落城した年ですね。鹿児島から北上してくる島津軍を相手に、大友家の高橋紹運が大野城、大宰府にある岩屋城で防戦。2万ともいわれる軍勢相手に763人で徹底抗戦し、全員が討ち死に又は自害したという壮絶な戦いだったとか。城の遺構はかなり残されていて、郭などとともに畝上の竪堀とかが残ってます。もし興味があったら行ってみてください、高橋紹運の墓もあります。
と、話がそれましたが、1586年、戦国時代の終盤に喪失し、1636年に現在の場所に再建されたそうです。開基は当時の鎌倉幕府執権、北条時頼。開基とはお寺を立てた人の事、開山は初代住職で寺を開いた人。
御供所町といえば博多の寺町として有名な地域。数ある寺の中から、関東に勢力を持つ北条氏の「三つ目鱗」の紋を見つけたので思わず立ち寄りました。調べてみると円覚寺は戦国時代の後北条ではなく、鎌倉幕府の執権北条家ゆかりの寺。開基(寺を建てた)は当時の幕府執権ですからね、博多の街が鎌倉幕府の支配下にあった頃に建てられた寺として博多の歴史を飾る一ページ。
山門をくぐって真っ直ぐに続く通路、境内から山門を振り返ってみると、奥に東長寺の巨大な建物が見えていました。
歴史を感じる鐘楼とお堂、そしてお地蔵様。広くはありませんが、とても品が良いお寺です。
お堂の中には観音様が祭られていました。
こちらが本堂、重厚感があって歴史の重みを感じる立派な建物。瓦には三つ目鱗、北条家の紋。残念ながら、一般拝観は出来ないみたいですね。
円覚寺は、千利休の教えを受け継ぐ茶道南方流で有名なお寺。隅々まで手入れの行き届いた庭は、ため息が出るほどきれいです。
本堂の脇には禅寺らしく、立派な庫裡があります。
歴史を重ねた建物が持つ威厳ある佇まい、重厚でとても美しい外観の建物。
博多の街は歴史ある都市なんですけど、その面影は少ししか残っていません。それがとても残念なんです。観光地として古い町を残す事と、地元に住む人たちの利便性は相反しますからね。残念ながら両立できないんですよ。
自動車も通れないような路地を残したり、高層の建物を建てられず低層の建物だらけになったり。そもそも、自分の土地でも自由に建物の建て替えが出来ないとか。古い町並みを残して観光地とするには、地元の人の「古い街を残す」という強い意志と覚悟、そして自己犠牲の精神がないと成り立たないんですね。
そういえば、100年間建物も街並みも生活習慣も変えず、そのまま残せば有名な観光地になれると誰かが言っていたような気が・・・
ということで、古い町でありながら開発によってその魅力のほとんどを失った博多ですが、その名残を時どき街なかに見つけることが出来ます。あとは想像力を働かせてみると、意外と楽しめるんですよ。いや、むしろ目の前に物がないから楽しめるんでしょうかね。脳内変換スキルを磨くには最適な場所かもしれません。
そういえば、お寺の前に立つ電柱に歴史看板が取り付けられていました。博多には100か所以上、こういう電柱があるそうなので探してみるのも面白いですよ。
「円覚寺」
住所:福岡市博多区御供所町13-11
円覚寺公式サイト⇒http://www.engakuji.org/
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