美味しい料理が食べたいという欲求は、遥か昔から人々の営みと共にあり続け、様々な工夫がなされてきました。今でこそ冷蔵など保存技術が進み、輸送技術も発達したために全国どの地域でも様々な美味しい料理が食べられますが、100年ほど前はまだ地産地消が当たり前の時代。地域によって料理の幅が限定されていました。
今回紹介する「博多皿うどん」は、昭和初期、約100年前の輸送や保存技術が今ほど発達していなかった時代に福岡で生まれたご当地グルメ。「美味しい中華麺を福岡で提供したい」という料理人の工夫から生み出されました。
「福新楼」の博多皿うどん
福新楼の外観。
福岡天神南地区、今泉にある福新楼。このお店は福岡で最初の中華料理店として、100年以上の歴史がある老舗。
創業者は福建省出身、当初は長崎の中華街に住んでいたそうですが、1904年に福岡の中洲で最初の中華料理店をオープン。この店が現在の福新楼の前身となりました。
時代が生んだ博多の味
店頭に立てられていたメニュー看板。
老舗というだけあって店構えはかなり立派、本格的な中華料理の店だけに敷居が高いのではないかと心配したのですが、入口に立てられた看板に普通の街中華みたいなメニューが貼られています。真ん中には博多皿うどんの紹介も。
これなら安心、目当てはもちろん博多皿うどんです。
入口に掛けられた博多皿うどんの説明。
入口には博多皿うどん誕生のいきさつがかかれた額が掛けられていました。
読んでみると、博多皿うどんは昭和初期に福新楼の二代目が考案した料理。当時は冷蔵庫が普及しておらず、人気メニューであったチャンポンの麺が仕入れた翌日には傷んでしまったそうです。そこで腐敗を防ぐために麺を焼き、その焼いた麺にスープを吸わせて戻すことで誕生したのが「博多皿うどん」、正式な料理名は「福建炒麺」というそうです。
さらに福岡で始めて中華麺を作ったのが福新楼で、1948年には「張源洋行」という製麺会社を設立、製麺所の老舗として現在も営業しています。さらに言うと福岡で始めて「もやし」の栽培に成功したのも福新楼なのだとか。
入口エントランスに飾られたサンプル。
店舗入り口、エントランスに飾られていたサンプル。博多皿うどん(福建炒麺)のものもあります。
福新楼の店内。
中華料理店らしい品のある店内、老舗の名に恥じない重厚な雰囲気ですが、スタッフの接客がとてもアットホームというか柔らかいので一人でも気軽に入ることができます。
ぶっちゃけ貧乏でコミュ障というダメ中年ですからね、こんな店であんまりピシッとやられちゃうと気後れしてしまいます。
じわ~っと旨い博多のご当地グルメ
テーブルの調味料。
テーブル席に通され着座、注文はもちろん「博多皿うどん」。見た目以上に手間のかかる料理らしく、15分ほどかかると伝えられました。
テーブルの上にはザーサイの漬物、調味料にラー油、コショウ、酢、醤油、赤だれ。赤だれはオレンジ果汁の入ったピリ辛甘酢だそうです。
福新楼の博多皿うどん。
15分くらい待つかもといわれたけども、実際に待ったのは10分くらいでしょうか。博多皿うどんがやってきました。
この皿うどんは具を炒めて、スープに具のうま味を移し、さらにそのスープで焼き固めた面を戻すという作業が必要なので炒めるだけの料理じゃないんです。なので若干時間がかかるんですね。
博多皿うどんの麺。
具沢山なので麺が完全に埋まってます。中から麺を出してみると、太い角麺が出てきました。ちゃんぽん麺というと丸麺を見かける事が多いのですが、ガチッとエッジの効いた角麺です。
スープをしっかりと吸っているために、茶褐色。これは見るからに美味しそう。
一口食べると分かる、コレは長崎の皿うどんとは全く別物だ。
スープで戻されてモチッとした麺をひと息にズズッと口の中へ、瞬間にスープの優しいうま味が口の中一杯に広がる。
今風のメリハリが効いた「味の強い調味料沢山使ってます」という味ではなく「しっかり丁寧に手作りしてます系」の滋味豊かな味。麺自体に味が付いていて、コクのある旨みがジワ~と押し寄せてくる。
具はシンプル、キャベツにもやし、豚肉や魚の練り物など。海老やイカといった海鮮は、当時から入っていなかったそうです。
味に変化を付けるのにラー油をかけようかと思ったのだけど、せっかくだから赤だれをかけてみました。
見た目には殆ど分かりませんが、ラー油と違ってとてもサッパリした味。辛さはそこそこ、けっこうピリッと唐辛子の辛さが効いていてとても美味しい。優しい皿うどんの味によく合いました。
博多の中華麺の歴史は福新楼から始まった
明治時代、すでにチャンポンを出す中華料理店を営んでいたという福新楼。福岡における中華麺を使った料理の元祖ともいえるお店です。実際に福岡ではチャンポンがよく食べられていて、ラーメンよりもチャンポンを出す店のほうが多いんじゃないかというくらい。
そしてチャンポンから派生した博多皿うどん、時代は移り変わっても、受け継がれていく福岡の味です。
「福新楼」
住所:福岡市中央区今泉1-17-8
営業時間:11:30から22:00
定休日:火曜日、年末年始
※この記事は私が訪問した時のものです、現状と異なる場合があります。最新情報、詳細はご自身で確認することをおすすめします。
福新楼公式サイト⇒http://www.fuxinlou.co.jp/
最新情報をお届けします
Twitter でハカテンをフォローしよう!
Follow @haka_ten